研究内容

固体摩擦の描像と摩擦の法則の再編

「固体の摩擦には静摩擦と動摩擦の二種類が存在する」… 摩擦プロセスの描像の根幹をなすこの解釈は、かの Charles-Augustin de Coulomb(1736~1806)以降、200年以上にわたり支持されてきました。高校の物理にも登場する「二種類の摩擦」ですが、実は未だに謎が多く、静摩擦の存在に疑問を投げ掛ける実験結果も報告されています。このような混沌とした状況の中、本研究室では、静摩擦の存在を仮定することなく固着状態を作り出し、動摩擦ベクトルの回転で「固着と滑りの遷移」を説明するシナリオを発見しました。以後、純粋に力学の言葉だけで語られる動的固着理論を起点として、摩擦プロセスの描像と摩擦の法則を再編する研究を展開しています。


接触面の起動問題【静摩擦係数は物性定数ではない】

☆ S. Maegawa, A. Suzuki, K. Nakano: "Precursors of global slip in a longitudinal line contact under non-uniform normal loading", Tribology Letters, 38, 313-323 (2010).


動的固着理論【静摩擦は動摩擦ベクトルの回転が生み出す幻影】

☆ K. Nakano, V. L. Popov: "Dynamic stiction without static friction: The role of friction vector rotation", Physical Review E, 102, 063001 (2020).


静摩擦のパラドックス【静摩擦の謎を解く鍵は対向面の浮上】

☆ T. Watanabe, K. Nakano: "Viscoelastic toy model explaining the static friction paradox in stick-slip instability without friction laws", Physical Review E, 111, 065504 (2025).



静摩擦のパラドックス:粘弾性ファンデーションからの反力と重力を受けて運動するプローブの力学シミュレーション。相対運動する二面の間には、静摩擦も動摩擦も与えていない。それにもかかわらず、あたかも静摩擦と動摩擦が交互に現れているかのように見える。さらにこの状況を詳しく分析すると、静摩擦の存在に疑問を投げ掛ける実験事実と絶妙に合致している。これは単なる偶然なのか?それとも静摩擦は「対向面の浮上が生み出す幻影」なのだろうか?(→論文を読む