タイヤやシューズをはじめとして、ウェブハンドリングなどの高摩擦を要する接触面では、エラストマーが用いられています。しかし、エラストマーの摩擦プロセスは、豊かな柔軟性ゆえに特異的で、その理解は立ち遅れています。また、近年の環境問題(森林破壊・マイクロプラスチック)を背景に、エラストマーの摩擦と摩耗の深い理解が今改めて望まれています。本研究室では、固体の粘弾性に由来する摩擦プロセスの粗視化モデル(粘弾性ファンデーション:Nakano & Kono, 2020)を簡便かつ頑強な「思考ツール」として開発し、横浜国立大学の 尾崎 伸吾 教授ならびに産業界との緊密な連携の下、エラストマーの摩擦と摩耗を理解するシナリオを探求すると共に、粘弾性ファンデーションを他の材料へ拡張展開して、多種多様な材料の摩擦プロセスを統一的に理解するシナリオを探求しています。
K. Nakano, M. Kono, Transient and steady sliding friction of elastomers: Impact of vertical lift, Frontiers in Mechanical Engineering, 6, 38 (2020).
T. Watanabe, S. Hatanaka, K. Nakano, Dimensionless numbers and master curves for sliding friction from the Kelvin-Voigt viscoelasticity of solids, Tribology Online, 18, 406-416 (2023).
T. Watanabe, K. Nakano, Two origins for bell-shaped velocity-dependent friction coefficient: Kelvin-Voigt or standard linear solid viscoelasticity, Tribology Online, 19, 167-177 (2024).