研究内容
皮膚の摩擦プロセスと触覚情報技術
我々が持つ五感の一つである肌の触感覚(触覚)は、物体に触れて初めて機能する感覚です。つまり、触覚とは、皮膚と物体との接触と摩擦を通して外界の情報を獲得する「距離ゼロの感覚」であるとともに、我々が「現実世界にいることを強く意識させる感覚」でもあります。本研究室では、産業界との緊密な連携のもと、化粧品の塗布触感の獲得プロセスを模擬するエキスパートシステムの開発を通して、皮膚の摩擦プロセスと触覚情報の関係を探求しています。本アプローチにより、産業界の商品開発のボトルネックとなる官能試験を簡略化して、商品開発のサイクルを劇的に加速することができます。
摩擦認証【触覚情報で個人を認証する】
☆ 中野健, 兵頭潤, 立石朋也: "触覚情報を利用したバイオメトリクス認証法", 日本機械学会論文集C編, 71, 2769-2775 (2005).
☆ 立石朋也, 中野健: "触覚情報を利用した個人認証システムにおけるセンサのアレイ化と照合アルゴリズムの検討", 日本機械学会論文集C編, 72, 3212-3220 (2006).
微粒子の識別【触感の違いで微粒子のサイズを識別する】
☆ 中野健, 車田研一, 若林勇, 山本浩司: "触覚情報を利用した粉粒体の粒径識別:人工システムの構築とヒト被験者実験との比較", 日本機械学会論文集C編, 73, 347-353 (2007).
振動の知覚【ヒトの触感覚は音色の違いを識別する】
化粧品の塗布触感【ヒトの触感覚はツンデレを好む】
化粧品の塗布触感【触感の違いを視覚化する】

化粧品の塗布触感:肌に化粧品(リキッドファンデーション)を塗布する行動を模擬した摩擦試験を実施。獲得した時系列信号から11種類の特徴量(X1~X11)を抽出。化粧品会社の熟練技術者による官能試験から5種類の触感スコア(Y1~Y5)を獲得※。両者(特徴量と触感スコア)の関係をニューラルネットワークで学習。構築したエキスパートシステムの主因子分析から「静摩擦が高く動摩擦が低いとき触感スコアが高い」ことを発見。つまりは「ヒトの触感覚はツンデレを好む※」ことを突き止めた。(→論文を読む)
※触感スコア:官能試験の評価項目は「Y1:のびのよさ、Y2:さらさら感、Y3:なめらかさ、Y4:やわらかさ、Y5:肌へのつきのよさ」の5種類。
※ツンデレ:敵対的な態度(ツンツン)と好意的な態度(デレデレ)の二つの顔をあわせ持つ様子のこと。アニメや漫画などのキャラクターの性格設定として使われている。